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医療・福祉制度



はじめに

心臓病で生まれた患者が成長して大人になり生活を営んでいくためには、さまざまな社会的な障壁(障害)を乗り越えていかなければなりません。それを社会全体で補い合い、支え合っていくためにさまざまな社会保障制度があります。これらの制度は、病気や障害をもっていても、安心して医療を受けることができ、より良い生活が送れるようにと、守る会をはじめ、患者・障害者が長年にわたって運動をして、積み重ねてきたものです。

私たち心臓病児者と家族にかかわる制度は、年齢、病名や重症度、住んでいる地域、障害認定を受けているかどうかなどにより、どの制度にあてはまるのか、非常にわかりにくくなっています。どの制度も、申請をしないと受けることができないために、知らないうちに該当する時期を過ぎてしまうこともあります。

「該当するのではないか?」と思ったら、窓口へ相談をして、なるべく早く申請をしましょう。

また、「該当しない」「等級が下がった」と審査されても、その決定に不服申し立てをすることができます。あきらめないで、守る会に相談してください。
※制度の詳細は…
新版「心臓病児者の幸せのために」(第6章:心臓病児者を支える社会保障制度)をご覧ください。

心臓病

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医療費にかかわること

日本では「国民皆保険制度」により、医療費が高額になっても一部の負担で医療が受けられるようになっています。しかし、その負担額は年々増額されてきており、心臓手術や検査、高額な薬などの負担は、世帯にとって大きなものになります。そうした長期に多額の自己負担がかかる患者・障害者には、公費(国・自治体)による助成制度を受けることで、無料もしくは所得に応じた上限額までの負担により医療を受けられるようになります。
制度により、年齢、病名と重症度、障害者手帳の有無と等級などで、利用できる制度が異なります。また、入院時の食事代は一部負担金があります。また、先進医療や差額ベッドなどの保険が適用されない医療の負担もあります。それらは、公的助成の対象にならないことが多いので気をつけなければいけません。

心臓病児者が利用できる公的医療費助成


小児期 成人期
自立支援医療(育成医療)
小児慢性特定疾病医療費助成 難病の医療費助成(特定医療費の支給)
子ども医療費助成制度 ※ 重度心身障害者医療費助成 ※
※ 自治体が行っている制度で都道府県により違う

自立支援医療の基本的な枠組み

18歳未満の心臓病の手術にかかわる費用については自立支援医療(育成医療)の対象になります。
申請は市区町村の窓口です。

自立支援医療の基本的な枠組み

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小児慢性特定疾病の医療費助成

18歳未満で小児慢性特定疾病に該当する疾病の子どもに対する医療費の助成があり、月の負担は所得に応じた自己負担限度額までで治療を受けることができます。継続して服薬をしているなどの基準があります。継続して20歳未満まで受給することができます。助成対象は手術や検査、内科的治療費です。また、入院時の食事代の負担額も軽減されます。
申請は都道府県の保健所です。

小児慢性特定疾病医療費助成の自己負担限度額

小児慢性特定疾病医療費助成の自己負担限度額

重症:下記のいずれかに該当する者。
  1. 高額な医療が長期的に継続する者(医療費総額が5万円/月(例えば医療保険の2割負担の場合、医療費の自己負担が1万円/月)を超える月が年間6回以上ある場合)
  2. 重症患者基準に適合する者
【厚生労働省資料にもとづき作成】

小児慢性特定疾病情報センターのページへ ≫

難病の医療費助成

子どもの心臓病の一部は難病の医療費助成の対象(指定難病)になっています。重症度基準に該当する必要があります。月の負担は所得に応じた自己負担限度額までとなっています。助成対象は手術や検査、内科的治療費です。また、入院時の食事代の負担額も軽減されます。
申請は都道府県の保健所です。

心疾患の医療費助成対象(指定難病)

心疾患の医療費助成対象(指定難病)

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難病にかかる医療費助成の自己負担上限

難病患者への医療費助成

高額かつ長期:月ごとの医療費総額が5万円を超える月が年間6回以上ある者
(例えば医療保険の2割負担の場合、医療費の自己負担が1万円を超える月が6回以上)
【軽症高額該当】重症度基準非該当だが高額な医療費がつづく者も対象に


難病情報センターのページへ ≫


付添い・交通費の助成

病気の治療のために遠方の専門医療機関にかかる場合には、付き添いの家族が安価で宿泊できる滞在施設があります。運営は、病院や公益法人などの民間で行っており、その施設の窓口に直接申し込みをします。利用する家族が多い施設は、空きがないことが多いので、入院が決まったらすぐに問い合わせをしましょう。

交通費の助成

通院のための患者と家族の交通費には国の助成はありません。自治体によっては、小児慢性特定疾病や難病、障害者が県外に治療に行く時に補助を出しているところがありますので、医療費助成の申請の時に問い合わせてみてください。


身体障害者手帳と障害福祉

身体障害者手帳

一定の症状がある心臓病児者には身体障害者手帳が交付されます。
心臓病などの内部障害では1、3、4級の等級があります。
手帳の交付を受けると、国や自治体の様々な福祉制度等を受けることができます。
障害認定は子どもでも受けることができますので、主治医に相談しながら早期に取得しましょう。

心臓病(心臓機能障害)の認定基準(抜粋)
法別表
1級 心臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの
2級
3級
心臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの
4級 心臓の機能の障害により社会での日常生活活が著しく制限されるもの
  • 先天性心疾患(18歳未満に発症)患者はペースメーカ装着で1級
  • 人工弁は1級(機械弁、生体弁)
  • 心臓移植後は一定期間は1級でも、抗免疫療法の終了後は再認定
  • 心臓病では3歳未満でも認定可能
  • 18歳未満と以上では診断書と認定基準が違うので注意を(18歳以上になっても、先天性心疾患の申請は「18歳未満用」の診断書で可能)

国や自治体の主な障害児・者への福祉制度

国や自治体の主な障害児・者への福祉制

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障害児・者への手当

障害児を育てる親(扶養義務者)、障害児・者へ、生活を支えるための手当があります。
身体障害者手帳をもっていなくても申請することができ、認定基準は手帳とは違います。
ただし、それぞれに患者が日常生活上に支障をきたすなどの一定の認定基準があります。申請をして支給が決まった翌月からの支給になります。
一度該当しても、心臓病のように内部障害の場合は決められた期間で届け出を出さなければならず(現況届)、その際に等級の見直しにより降級や支給停止になることがあるので気をつけましょう。また、所得制限があります。
小児期(20歳未満) 特別児童扶養手当 1級 52,500円
2級 34,970円
障害児福祉手当 14,880円
成人期(20歳以上) 特別障害者手当 27,350円
(2021年4月現在の月額)
金額は前年度の物価上昇率により毎年見直されます


障害年金

20歳以降で一定の障害がある場合には障害年金の支給を受けることができます。身体障害者手帳をもっていなくても申請することができます。(手帳をもっていても受給できるとは限りません)
年金制度は、初診日(障害の原因になる疾患で医療機関にかかった日)に加入している年金制度から支給されることになっています。そのため、先天性心疾患の場合は「20歳前障害」=障害基礎年金の受給者となります。障害基礎年金は本人の所得による支給制限があります。

障害年金認定基準

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障害の仕組みと年金額

障害の仕組みと年金額

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障害年金生活者支援給付金

障害基礎年金受給者で前年所得が4,621,000円以下の人への生活支援が受けられます。
障害等級により支給額が違います。
支給額(月額) 1級 6,288円
2級 5,030円


心臓病児の学校生活

小中学校の通常学級で学ぶ子どもも多くいますが、障害の状態が重度であったり、他の障害をあわせもつ場合には、特別支援学校や特別支援学級を選択する病児も増えています。また、支援員・介助員を配置してもらったり、在宅酸素療法を行っている子どもには看護師を配置してもらったりといったこともあります。学校や教育委員会に相談をして、その子に合った教育環境を作っていきましょう。

就学先 利用できる制度
通常学級 特別支援教育支援員・介助員
看護師(医療的ケア看護職員)
特別支援学級
特別支援学校
「学校生活管理指導表」
小学生、中学生、高校生で何らかの疾患をもった児童生徒が、体育の時間や部活動において適切な運動の指導が受けられるようにするため、「学校生活管理指導表」を主治医に書いてもらい提出します。


心臓病者の就労

従業員43.3人以上の企業以上の事業所は、その従業員規模に応じて障害者を雇用する義務があります。それにより、障害者雇用の特別枠採用が設けられていて、身体障害者手帳をもっている場合はその対象になります。ハローワークの窓口で相談して積極的に活用しましょう。

障害者雇用促進法による特別枠採用

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重度…身体障害者手帳1、2級もしくは3級障害を2つ以上所持する者/
知的障害者判定機関で重度知的障害者と判定された者

障害者の福祉的就労

通常の事業所での就労が困難な障害者が、就労に必要な知識や技術を身につけることを支援する障害福祉サービスがあります。障害者総合支援法にもとづく就労移行支援事業、就労継続支援A型事業・B型事業などです。知的・精神障害などをあわせもっている場合に利用している心臓病者が増えています。
就労継続支援A型事業 就労継続支援B型事業
通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等の支援を行う。
(利用期間:制限なし)
通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う。
(利用期間:制限なし)
雇用契約あり
(最低賃金が保障)
雇用契約なし


裁定に納得がいかなかったら

行政不服審査法

障害年金や特別児童扶養手当、身体障害者手帳を取得する際の裁定に納得がいかないときには、その裁定を行った行政庁に対して、不服を述べ、再審査を求めることができます。
障害年金や健康保険などの社会保険には、各法で特別の行政不服審査制度が設けられています。その他の制度では、行政不服審査法にもとづく審査請求、異議申立てができます。最初の申立て(審査請求)は、裁定を知った日から3カ月以内に行うことになっています。提出書類は必ずコピーをとっておきましょう。
<審査請求>
審査請求書の様式は問いません。所定の書類がない場合には、次の事項を記載した書類を作成して提出します。
郵送の場合は書留にします。
【記載事項】
  1. 申請人の住所、氏名
  2. 通知名、処分庁名と日付(通知のコピー可)
  3. 処分を知った日(裁定書類の日付)
  4. 請求の趣旨(裁定に不服である旨を簡潔に)
  5. 請求の理由(裁定の理由とそれに対しての法令などによる根拠などを詳しく)
  6. 添付資料がある場合はその書類の名称
※詳しくは「新版『心臓病児者の幸せのために』」をご覧ください。